2019年5月、引退した競走馬たちに新たな人生を提供するためのホースシェルター「TCC Japan」が馬のまち栗東に誕生しました。ケガや体調不良などで競走馬としての役目を終えた馬たちを引き取り、次のステージへと送り出すための施設です。馬たちは再び有意義な時間を過ごすことができると同時に、人々にも喜びを与える存在となっています。TCC Japanの役割と目指すところについて、代表の山本高之さんに詳しくお話を伺いました。

ケガをした競走馬に希望を
新たな命を支える取り組み

多くの競走馬は、ケガをしたり、年をとると引退を余儀なくされます。しかし、その後の生活が保障されていない場合が多く、余生を過酷な状況で過ごさなければならないこともあります。こうした馬たちの居場所をつくり、馬たちと共に社会に新たな価値をつくりたいという想いからTCC Japanを創設しました。
現在、約50頭の馬たちがシェルターの一員として生活しています。治療やリハビリによって心身ともに回復した馬は、乗馬やホースセラピーのお手伝いなど新しい役割を与えられることになります。これまでに救われた馬たちは、秋田から鹿児島まで、全国35か所の乗馬クラブや学校の乗馬部、様々な施設などに預けられ、第二の人生を歩んでいます。しかし、残念ながら、ケガなどが治癒せず人と関わることが難しい馬もいます。彼らの余生を支え、最期のときまで馬と寄り添うことも大切なことだと考えています。

全国に広がるファンクラブ会員

ホースシェルターを支えているのは施設のスタッフだけではありません。約2800名のファンクラブ会員が、寄付や支援を通じて馬たちの生活を支えてくれています。彼らの協力によって、シェルターは常に多くの馬たちを受け入れ、ケアを行うことが可能となっています。

自然と馬とのふれあいで育む心と体

また、３歳から１８歳までの子どもを対象に、ホースセラピーを取り入れた児童発達支援・放課後等デイサービス「PONY KIDS」を運営しています。このプログラムは、馬とのふれあいや乗馬、馬の飼育管理などを通じて、子どもたちの心と体の発達をサポートする新しいリハビリテーション方法となっています。理学療法士などの専門スタッフが個々の子どもの発達に合わせた支援を行い、車いすを使用している子どもたちにも馬に乗ることができるようサポートしています。

馬とのふれあいで得られる効果

馬との関わりの中で、子どもたちはさまざまな成長を遂げます。例えば、馬に乗ることを通じて、体のバランスを整え、姿勢が良くなるだけでなく、馬をコントロールできるようになることで自信を持てるようになります。また、馬に対して思いやりを持ち、他者の気持ちを考えるようになる子もいます。馬房を掃除したり、馬のブラッシングなどの世話をする過程で「自分が役に立っている」という喜びを感じることができ、集中力を高めることにも役立っています。

馬と共に社会をゆたかにしていきたい

2025年3月、高島市に「TCC メタセコイアと馬の森」が誕生します。この施設は、観光牧場としての役割に加え、大人向けのホースリトリートプログラムを提供。馬と触れ合いながら心を癒し、豊かな時間を過ごせる場所となっています。これからも馬と共に、社会に新たな価値を創造し、地域とともに成長していくことを目指していきたいと考えています。